はじめに
上川盆地にはカシワ林が点在する。カシワは火山灰台地や海岸段丘に群生し、その厳しい自然環境の中では矮生して奇観を呈した純林を形成する。
中でも近文山のカシワ林は内陸にもかかわらず、強い西風と蛇紋岩のやせた土壌の影響をうけて矮生し、その景観には著しいものがある。
近文山のカシワ林にはじめて接したのは小学生のときで、スキーを履いて家をでてから山頂まで、雪の中を数時間、今考えれば良く行ったものだとあきれてしまう。
ポンコンニナイの急斜面を息を切らせながらスキーで登るのは、子供の体力の限界を超えていた。ときどき木にしがみ付くようにして休み、少し登ってはまた休んで、尾根に出るまでにすっかり疲れてしまった。
尾根から先は緩斜面がつづき、それほど体力を必要としなかったが、頂上近くのカシワの奇観は、子供の目には薄気味悪いものがあって恐かったのを思い出す。
樹高や太さは今と変らないように思うが、もっとたくさんのカシワが生えていて、下枝も低いところまであった。
当時、一帯にはエゾシカが居なかったので、食害による枝抜けなどがなかったのだと思う。その時のことを追憶するように、今でも近文山に登る。
遠くから山頂あたりを眺めていると、なんとなく登りたくなって登ってしまう。
そういう自然に出あえたことは幸せであり、ホームページの開設にあたって、自然観の原点に思える冬の近文山を最初に掲載した。
自然とのふれあいは、玄関から最初の一歩をふみ出したときに感じる風のかおりからはじまる。風かおる大地の息吹を少しだけ感じて、自然に遊びたいと思えるコンテンツの提供ができれば幸いだ。